エレメント・オブ・アニマ〜アートアニメーション&マテリアル展〜


アートアニメーション約40作品の上映と、造形や原画等作品素材の展示。


●ご挨拶

アニメーションにおける「マテリアル=(素材)」は多種多様です。「アニマ」とはラテン語で「魂」を意味する言葉で、アニメーションという言葉の起源となっています。粘土で出来た人形がまるで魂を吹き込まれたように動き出すクレイアニメや人形アニメ、砂で描かれた絵がまるで生きているように動き出す砂アニメ、切り絵や編み物が動き出すアニメなど、こうした様々な素材のアニメーションのファンタスティックな驚きは私たちの心を豊かにしてくれます。

 本展覧会では、こうした多種多様なマテリアルを駆使した日本の個人作家たちの手作りのアートアニメーションの上映に合わせて、各アニメ作品で使われるさまざまな素材(人形や原画等)を展示することによって、より多くの人々にアートアニメーションの存在を身近に感じてもらうことをコンセプトとしています。


●急速に成長し注目を集める個人制作アニメーションの世界について

 昨今、個人や少人数で制作されるアニメーションが注目を集めています。逆に、映画やアニメーションを大人数で制作することだけが良質とされる時代は終演を迎えつつあります。その背景は、コンピュータやネットといったテクノロジーの発展により個人ないし少人数規模制作でも技術的に良質なアニメーションを制作及び発表できる時代がおとずれたことにあります。

 押井守監督が「イノセンス」のインタビューで、大手スタジオの有能なアニメーターが自分の作品を作るべく独立していっていると、日本の商業アニメ界は華やかにみえて実は衰退していっていると、現場の現状を語っています。かのジョージ・ルーカスも「スターウォーズシリーズ」を完結させた昨年、インターネット違法ダウンロード等の現状から1億ドル規模の映画はもう作らないと宣言し、今は個人的に実験映画を作りたいと語りました。

 個人制作アニメーションの台頭を現す具体的な事例としては、CG映像の専門学校の卒業制作作品がDVD化されシリーズで20万枚を超える異例のヒットとなった「スキージャンプペア」(真島理一郎)や、脱サラして自主制作した短編アニメがインディーズレーベルでありながら世界でDVD10万枚を超えるヒットとなった「ほしのこえ」(新海誠)、自主制作で3年以上かけて制作された「頭山」(山村浩二)はアカデミー賞短編アニメ部門ノミネートとアヌシー国際アニメーションフェスティバル短編アニメ部門グランプリという日本人初の快挙を成し遂げています。こうした事例が増えるのと比例して、現在日本において数多くの国内外のアートアニメーションのDVDや書籍が販売されるようになっています。

 個の多様性が尊重され、個々人のライフスタイルが大きく変容していきている現代において、アニメーションの世界もパーソナルな世界に細分化されてきているのは必然的なことではないでしょうか?制作作業に大人数を介すということは、本当に伝えたい想いが多くのスタッフというフィルターを通過した分だけぼやけてしまいます。個人ないし少人数規模制作の作品の最大の良さは、ダイレクトに琴線に触れる作者の感情や感性が伝わってくることにあるのではないかと思います。手作りの温もりに優る贅沢はないということでしょう。


●アートアニメファンの皆様へ −アートギャラリーでのマテリアル展示の可能性ー

 映画館やホールでの上映ではなく、アートギャラリーという環境で、人形アニメーション作品で実際の撮影に使用した人形や背景セットの展示や、切り絵やドローイングの手描きによるアニメーションの原画を展示するとうことは、アニメーション作品から切り離された単体での人形としての作品価値や、絵としての作品価値が問われることになるでしょう。アートアニメーションに精通されている方々には、こうした新鮮な観点でより深く作品の構造に触れ考えていただこうという試みでもあります。



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